あなたはケアマネジャーという職業を知っていますか?
「介護を必要としている人の相談役」
「なんとなく介護に関わる仕事をしている人」
……
…そんな漠然としたイメージを持っている方もきっと少なくないことでしょう。
そこで、今回は、実際にケアマネとして働かれている2人の方をお呼びしてインタビューを実施!
「ケアマネって実際にどんな仕事をしているの?」
「どんなところがむずかしくて、どんなところにやりがいがあるの?」
などなど、ケアマネのリアルを聞きました。
Aさん(50代・女性):
主に歯科衛生士として15年ほど働いたのち、介護の世界へ。有料老人ホームで約1年勤務したのち、社会福祉協議会で13年ほど勤務している。
保有資格は、主任介護支援専門員、社会福祉士、ヘルパー2級、歯科衛生士
Bさん(30代・男性):
介護福祉系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームで勤務。金属18年目。保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、ホームヘルパー2級、アクティビティワーカー
目次
あなたは知ってる? 2つの「ケアマネ」
――そもそも「ケアマネジャー」ってどんな仕事なんですか?
Aさん:
ケアマネジャーとは、介護を受ける人のために、介護の方針を決めたりサービスの内容・費用などのケアプランを立てたりする専門家のこと。「ケアマネ」と言われることが多いですね。
Bさん:
いわゆるケアマネには、大きく分けて2タイプあります。
ひとつが「居宅ケアマネ」。居宅介護支援事業所などに所属して、自宅にお住まいの利用者に対して支援を行います。もうひとつが「施設ケアマネ」。特別養護老人ホームなどに所属して、入居されている利用者さんに対して支援を行います。
――ふむふむ。それぞれの特徴について教えてください!
Bさん:
施設ケアマネとして働いている僕の経験上、24時間、利用者さんの近くに人がいることは大きいですね。日常生活を送っていく中で何かが起きたときにすぐに対応できるので。
Aさん:
たしかに自宅だと夜中に転倒してしまったまま、家族が気づかず、何時間後に発見……なんてことが起きえてしまう。安全性を考えると、施設は安心かも。
Bさん:
間違いないです。施設だと、利用者さんの動きを感知してナースコールが作動する仕組みも備わっていることが多いので、何かあったときもすぐに介助に行くことができます。安全性を担保した上でケアプランを立てることができるのは、施設ケアマネならではですね。
――一方で、居宅ケアマネの良いところはどんなところにあると思いますか?
Aさん:
施設ケアマネも、居宅ケアマネも、どちらも経験した私からすると、居宅ケアマネの方が、ケアプランの自由度は高いと思いますね。施設ケアマネだと、どうしても、利用者さんの人数が多い分、個別対応がむずかしいこともしばしば。居宅ケアマネだと、ひとりひとりの生活歴やバックグラウンドに合ったオーダーメイドのケアプランを立てることができます。
ケアマネの腕の見せ所!ケアプランの立て方
――ちなみに普段は、ケアプランってどうやって立てているんですか?
Aさん:
まず「利用者さんにとって、どのような介護サービスが必要なのか」「どんなことを希望しているのか」といった状況を客観的に把握・分析するアセスメントという作業が大切になります。
Bさん:
大まかに言うと「○○がしたい。だけど○○ができない。だから○○が必要だ」といったケアの計画ですね。たとえば、「買い物に行きたいけれど、歩けないから行けない」というケース。そこでは「なんで歩けないのか」といった原因を掘り下げていきます。歩けないことは一時的なものなのか、それとも歩行能力の向上は見込めないのか……そのように病状理解をしながら利用者さんに合わせた目標を設定していくんです。
――なるほど。利用者さんの声を聞きながらプランを立てていく、と。
Aさん:
ただ、「利用者さんの声を聞く」こともむずかしいんですよ。
――と、いいますと……?
Bさん:
例えば、認知症の利用者さんは認知能力が低下しているので、自分の気持ちや意思を言葉にするのがむずかしいケースがあるんです。正直、ケアマネがその方の人柄やバックグラウンドを踏まえて想像力を働かせてカバーするしかないこともあります。
――正解がない分、ケアプランを立てることは一筋縄ではいかないんだなぁ……
元・歯科衛生士が活躍!?ケアマネに求められることとは
――ケアプランを立てる難しさや奥深さが少しわかった気がします……おふたりは、ケアマネに必要なことってなんだと思いますか?
Aさん・Bさん:
「しゃべり」でしょうね。
――おお……!おふたりとも、そこは共通しているんですね。
Aさん:
しゃべるのが嫌いなケアマネを見たことがないです(笑)。
Bさん:
利用者さん、介護士、施設長、看護師、管理栄養士……さまざまな方とコミュニケーションを取りながら進めていくのがケアマネの仕事。伝達能力は欠かせませんからね。
Aさん:
特に居宅ケアマネの場合は、ケアプランを立てる以外にも、身近な困りごとの相談にも乗るケースも多いんですよ。「飼っている犬が元気ない」という悩みから「家の電気が止まった」という相談まで。利用者さんの家族を含め頻繁にコミュニケーションを取るので、人と関わることが苦手だと少し大変かもしれません。
Bさん:
あとは、情報量ですかね。「この利用者さんには、このヘルパーさんがいい」といったように幅広い選択肢の中から最適な判断ができることは、とても重要。利用者さんが自分に合ったヘルパーさんを自力で探すことは、とてもじゃないけれど大変だと思います。行政に相談するのもいいけれど、行政も必ずしも現場のリアルな情報を常に把握しているわけではありませんし。
――情報を集めるには、どうすれば良いですか?
Aさん:
さまざまな研修に出ることがひとつ。あとは、業務を進める中で自然と横のつながりが増えてくることもあるかなと思います。
Bさん:
ケアマネって経験がものをいう仕事なんです。経験を積めば積むほど、さまざまな施設や専門職の方とつながります。そのような人とのつながりも、ケアプランを立てる上では重要になってきます。
Aさん:
経験という観点からすると、ケアマネの資格取得要件も独特です。たとえば保健・医療・福祉に関する国家資格保有者としての実務経験が5年以上ないと受験資格がなかったり。つまり、最低でも5年以上、社会経験を積まないとそもそも受験資格すら与えられない。決して新卒では取ることができない資格なんです。
――なるほど……しかも、単なる「社会人経験」ではなく、「保健・医療・福祉に関する国家資格保有者としての実務経験」というところもポイントになりそうですね。
Aさん:
まさにその通り。私の場合は、歯科衛生士の資格を持っています。ほかにも、周りには看護師や保健師、薬剤師からケアマネになった人もいました。一見、介護とは遠く見える職種からケアマネになる方も多いんですよ。
――ちなみにケアマネとして、歯科衛生士の資格が活かされたシーンってありますか?
Aさん
近年は、口腔内の衛生が心臓病に与えるリスクや嚥下(えんげ)の重要性が指摘されるようになってきています。そういったときに、歯科衛生士の経験を活かしてアドバイスできるのは、メリットかなと思いますね。
ケアマネの醍醐味とは
――そもそもおふたりはどうしてケアマネになろうと思ったんですか?
Bさん:
僕の場合は、自分が提供できるサービスの質を高めたいと思っていたから。介護の専門知識を身につければ、利用者さんのよりよい暮らしを実現できるかもしれない。介護保険の仕組みを学べば、介護保険の利用方法を知らなかった利用者さんのご家族のお手伝いができるかもしれない……さまざまなシーンで、さまざまな方の力になれると思ったんです。
Aさん:
私の場合は、資格を活かして長く働ける仕事を探していたのが大きいかな。歯科衛生士って若い人が活躍する職場というイメージがあって(笑)。そうしたら、ケアマネという選択肢が浮かんできたんです。今後、高齢化社会も待っているし、社会的にもどんどん求められていく職業だろうなと思いました。
――ケアマネを目指す理由も人それぞれですね。それでは最後におふたりが考えるケアマネの醍醐味を教えてください!
Aさん:
最初は「食いっぱぐれない仕事」というイメージで選んだケアマネだけど、実際にやってみたら私にはピッタリ。勉強しないといけないことはたくさんあるし、毎日忙しいし、怒られることだってある。でも、目の前に困っている人がいて、その人を助ける術を持つことができている。社会に必要不可欠な仕事であることが、何よりのやりがいですね。おかげさまでハマっちゃいました。
Bさん:
僕は、その人の人生の一部に介入できることかな。ケアマネは、利用者さんの想いを代弁する役割を担っていると思うし、「人生の終盤をどう生きたいか」に一生懸命寄り添っていくことができる。施設ケアマネの場合、施設で看取られる方もいますが、ご家族から「ありがとう」と感謝されることもあります。そんなとき、やっていて良かったなと思いますね。人の役に立ちたいという人には、良い仕事だと思います。