様々な職種が働く介護業界の中でも、施設運営のキーパーソンとも言える仕事が「生活相談員(生活指導員)」です。
生活相談員は施設の利用者やそのご家族と、施設職員、関係機関などをつなぐ役割を担っています。
この記事では生活指導員について、必要な資格や具体的な仕事内容、働ける場所を解説していきます。
福祉の仕事に興味がある人や、介護業界への転職を考えている人は、ぜひ記事を最後までチェックしてください。
目次
生活指導員とは?
生活指導員(生活相談員)とは、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム、デイサービスなどの介護福祉施設で活躍する職種のひとつです。
生活指導員は、介護や福祉に対する社会の姿勢の変化とともに、現在は「生活相談員」という名称で呼ばれることが増えていますが、名称が異なるだけで仕事内容に変わりはありません。
生活指導員は利用者の相談対応や施設利用時の様々な手続き、関係機関との連携などを行う、いわば施設の窓口のような存在で、利用者が不自由なく介護サービスを受けられるように調整する役割を担っています。
詳しい仕事内容は後ほど触れますが、生活指導員の業務内容は多岐に渡り、施設の形態や方針によっても求められる仕事が異なっています。
言い方を変えれば、生活指導員の業務の範囲は明確には決められておらず、施設によっては介護業務を兼務する場合もあるのです。
また、例えば、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームでは、利用者100名に対し常勤の生活指導員を1名以上配置しなければいけないと、施設の形態別に配置基準が設けられているのも特徴のひとつです。
生活指導員になるには
生活相談員の資格要件
実は「生活相談員」という名称の資格は存在せず、決められた資格要件を満たしていれば生活相談員になることができます。
一般的には、「社会福祉士」、「精神保健福祉士」、「社会福祉主事任用資格」のいずれかの資格を取得していることが資格要件となっています。
●社会福祉士
社会福祉士とは、身体的、または精神的な障害や環境上の理由から日常生活を送ることが困難な人に相談援助を行う専門職で、国家資格のひとつです。
福祉や医療サービスを必要としている人に対し、専門的な知識や技術で援助や指導を行う他、関係機関とのつなぎ役を果たします。
生活相談員の3つの資格要件のうち、特に重視されているのが社会福祉士の資格です。
●精神保健福祉士
精神保健福祉士も社会福祉士と同様に、福祉業務に関する国家資格のひとつです。
業務内容も社会福祉士と似ていますが、精神保健福祉士の場合、支援の対象は主に精神的な障害を持つ人にしぼられています。
精神障害を抱える人が、スムーズに社会生活を送れるようにサポートするのが役割です。
●社会福祉主事任用資格
社会福祉主事とは、都道府県や市町村が運営する福祉事務所において、利用者のサポートを行う職員のことを言います。
社会福祉主事任用資格を得るには、大学や短大で厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を3科目以上履修して卒業する他に、都道府県が実施する講習会を受講したり、指定された養成機関を修了したりなどの方法があります。
資格・経験が無くてもなれる?
自治体によっては、社会福祉士や精神保健福祉士の資格、社会福祉主事任用資格を取得していない人でも、介護の実務経験があれば生活指導員に認定するケースもあります。
「資格を持っていないけれど、生活指導員になりたい」という人は、自治体ごとの資格要件を確認してみると良いでしょう。
下記に、実務経験を資格要件にしている、自治体の一例を掲載するので参考にしてください。
●東京都
特別養護老人ホームにて介護の提供に係る計画の作成に関し1年以上(勤務日数180日以上)の実務経験がある者、老人福祉施設の施設長経験者
●青森県
社会福祉施設等で2年以上介護または相談業務に従事した者
●福岡県
社会福祉施設等で3年以上勤務している、または勤務したことのある者
生活相談員の仕事内容
基本的な役割は「相談・連携・調整」
生活相談員の基本的な役割は、福祉施設の利用者やその家族からの「相談」を受け、関係機関と「連携」を図り、利用者が適切に介護サービスを受けられるように「調整」を行うことです。
利用者と施設職員、関係機関をつなぐため、必然的に業務内容も多岐に渡ることになります。
例えば、利用者に直接対応する業務としては、下記のようなものがあります。
・利用者や家族からの相談対応
・施設の入所や退所、サービスの利用に関する手続き
・入所を希望する人への施設の見学対応
・苦情や要望への対応
他にも、施設内や関係機関との連携として以下のような業務を行います。
・ケアマネージャーや関係機関との連絡・調整
・ケアプランの作成の援助や、個別援助計画の作成
・施設内における連絡・調整
・介護担当職員のサポート
上記はあくまでも一例であり、勤務する施設によってはこれ以外の業務を担当する可能性も大いにあります。
生活相談員は対応力が必要と言えるでしょう。
生活相談員の給料
生活相談員の給与は、施設の種別や地域によっても異なりますが、平均して200,000~210,000円前後であることが多いです。
ただし、これは基本給のみを示したものなので、各種手当やボーナスなどを含めると、実際の支給額はもっと高額だと考えられます。
勤続年数や役職、保有している資格によっても、給与は大きく変わってくるでしょう。
また、生活相談員に限らず言えることですが、地方よりは首都圏や都市部の方が給与は高い傾向にあります。
生活指導員の職場
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、「特養」や「介護老人福祉施設」とも呼ばれる介護施設で、自治体や社会福祉法人が運営する公的な施設でもあります。
要介護1~5の認定を受けた65歳以上の高齢者が入所しています。
身体的または精神的な障害があり自宅での介護が難しい方に対し、24時間体制で、入浴や排泄、食事等の日常生活における介助を行うとともに、健康管理や機能訓練なども担っているのです。
特別養護老人ホームに配置された生活相談員は、利用者の相談対応や各種手続き、施設内の調整を行う他、関係機関と連携し適切な介護サービスを受けられるよう調整を行います。
ショートステイ
ショートステイとは、65歳以上で、要支援1・2の認定を受けた方、または要介護1~5の認定を受けた方に対して、宿泊を伴う介護サービスを提供する施設です。
宿泊付きで24時間体制でサービスを提供しているという点では特別養護老人ホームと同様ですが、ショートステイは連続して利用できる日数は30日までと決められており、主に利用者の心身の回復や、介護者の負担軽減などを目的に運営されています。
施設全体では、入浴・排泄・食事等のサポートや機能訓練などを行っていますが、生活相談員は、主に利用者の申し込み手続きや施設利用の説明、ケアプランの作成、施設内外との連携や調整などの役割を担います。
デイサービス
デイサービスは「通所介護施設」のことで、利用を希望する高齢者に日帰りで介護・介助サービスを提供する施設です。
食事や入浴等のサポートを行う他、様々なレクリエーションによってスタッフや他の利用者との交流を促し、孤独感の解消にもつなげています。
デイサービスで勤務する生活相談員の主な仕事は、利用者の相談対応や施設の利用手続き、提供するサービスの考案、施設内や関係機関との連携・調整等になります。
デイサービスの場合、利用者の自宅から施設までの送迎を伴うので、施設によっては生活相談員が送迎業務を担うこともあるようです。
障害者福祉施設
障害者福祉施設とは、身体的または知的な障害を持つ人に福祉サービスを提供する施設です。
障害者福祉施設には通所型と入所型があり、また障害の程度によっても利用する施設の種別は様々あります。
障害者福祉施設の生活相談員は、利用者の相談対応や手続きを行うだけでなく、利用者が快適に日常生活を送れるように援助や訓練を行い、利用者の自立を促します。
また、施設内で行う作業のサポートや、利用者の家族、関係機関との連携・調整を行うのも大事な業務のひとつです。
まとめ
生活相談員は利用者と施設内外をつなぎ、利用者が適切な介護サービスを受けられるよう調整する役割を担っています。
業務内容は幅広く、臨機応変に対処する対応力も求められますが、同時にたくさんの人や職種と関わることができる、やりがいのある仕事とも言えるでしょう。
介護や福祉施設で多くの人の役に立ちたいと考えている人は、ぜひ生活指導員を目指してみてはいかがでしょうか。